井波日本遺産

宮大工の鑿一丁から生まれた
木彫刻美術館・井波

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日本遺産の思い

前川 大地

Episode 01.

前川 大地

木彫刻師
日本遺産ワーキンググループメンバー
彫刻のまちに生まれて。
父は井波八日町に工房を構える木彫刻師です。自宅と工房は離れていて、仕事場を訪れるのは夏の太子伝会くらいでしたが、幼いころから広告の裏に絵を描いたり、父の粘土で遊んだりして家族にほめられるうちに、自然と彫刻師の道を志すように。美大の彫刻科を卒業後、ベルリンへ。東西の壁が壊れて10年経ち、建築ラッシュに沸く時代、アーティストの助手をしながら文化やアートに刺激を受けました。3年後に帰国して東京で3年暮らした後、井波に戻って父に弟子入り。木彫刻師として縁起物や贈答品を中心に制作しています。
木彫シャンデリアのチャレンジ。
日本遺産の事業では、木彫刻のシャンデリアを制作。ラフスケッチを描き、仲間と相談して加飾や構造を決めました。社寺建築に用いられる「法相華」という唐草と架空の花を組み合わせた紋様を施すなど、井波彫刻の技術を応用。5名の木彫刻師と分担し、金属やガラスが一般的な照明のアーム部分も木製にし、木の風合いや経年変化を楽しめる作品に仕上がりました。和室に欄間を飾る文化が途絶えつつあるなか、井波彫刻の欄間に代わる新たな工芸品として国内外にPRしたいと思います。
まちづくりは、人づくり。
井波には木彫刻の徒弟制度や訓練校があり、これからも伝統は受け継がれていくでしょう。しかし、糸鋸師、建具屋、製材など、職人の高齢化により彫刻づくりを支える技術が途絶える可能性があります。近年は、後輩の木工職人が建具の道へ進む流れもあり、彼らの開業をサポートしていくことが、課題のひとつです。
子どもたちが地元に誇りを持つためには、大人が「楽しく働いている姿」を見せることだと思います。すべての世代が未来を描けるような、かっこいい大人のいるまちを創っていきたいです。

桜哉 (南部 成美)

Episode 02.

桜哉 (南部 成美)

クリエイター、コスプレイヤー
日本遺産ワーキンググループメンバー
コスプレ×井波彫刻で新たな風を。
私がコスプレを始めたきっかけは、「富山こすぷれフェスタ」に一般参加したことです。レイヤーさんたちの美しさ、かっこよさに感動し、自分もやろうと心に決めました。地元井波から石川県の短大に進学し、ファッションコース、デザインコースを専攻。在学中は東京の現代版「松下村塾」にも通い、大河ドラマで吉田松陰を演じた伊勢谷友介氏らに、志など考え方を学びました。塾ではコスプレ×井波彫刻のコラボを披露し、手ごたえを実感。現在、高瀬神社でアルバイトしながらレイヤー、アート活動を続けています。
人とコラボできる井波彫刻。
日本遺産チームで出展した「ツーリズムエキスポ2018」では、井波彫刻の施されたギターを携えてオリジナルコスプレを披露し、来場者に井波の日本遺産事業をPRしました。井波彫刻のギターは何度もテレビ番組で紹介されていて知名度があり、熱心に装飾を眺める方も多く、コスプレと相まってインパクトのある展示になったのではと思います。スマホやSNSの時代に、人とコラボできるような井波彫刻の作品が増えていくと、もっと面白い展開が生まれるかもしれませんね。
木の香り、彫刻の美しさを伝えたい。
私は井波が好きです。地元の歴史、伝統、人の温かさをふくめた独特の世界観が魅力的だと思います。「木彫りの里」のそばに実家があるため、木の香りを嗅ぎ、木彫りの音を聴きながら小・中学校へ通学していました。そんな当たり前の光景が、他県に進学したことで、特別なことだったと気づいたのです。短大の同級生は井波彫刻のことを知らず、興味もあまりない様子でした。ずっと見ても飽きることのない井波彫刻の繊細で荘厳な美しさを、活動を通じて同世代にも伝えていくことができればと思っています。

松倉 奈弓

Episode 03.

松倉 奈弓

地域おこし協力隊(井波まちなか担当)
日本遺産ワーキンググループメンバー
山々が連なるまちに惹かれて。
富山市出身のパートナーと結婚し、2019年6月に地域おこし協力隊として井波へ移住。海に近い愛知県蒲郡市で育ったので、山々が連なる景色は新鮮で、山から霧が降りてくる幻想的な様子に惹かれました。大きさに圧倒される瑞泉寺、古都の雰囲気の八日街通り、路地裏には趣のあるお蕎麦屋やお菓子屋があり、散策が楽しいです。協力隊の着任時、日本遺産の座長に声をかけていただいて活動に参加。元々アートに興味があり、学生時代に留学したアメリカでは、美術館を訪れて心惹かれたので、伝統工芸やものづくりについて知りたいと思っています。
新鮮な目で、できることを探る。
日本遺産に関わる活動では、人づくりを支える(MA)Pプロジェクトのサポートメンバーとして、まず地元の方を中心にインタビューを行い、ニーズを探っています。
2019年の南砺市いなみ国際木彫刻キャンプにも通訳スタッフとして参加し、作品づくりに参加する楽しさを知ったことで、木彫り体験の充実や、ちょうどよい木彫刻のギフトがあればとアイデアをふくらませています。
先日、遊びに来ていた友人が「彫刻の看板いいね」と言った時にハッとして、自分がいかに新鮮な目を持ち続けられるかが大切だと実感しました。
つながることで、夢をかなえる。
井波の生活はまだまだこれから。人と話すのは好きなので、まずは知り合いを増やし、つながりを広げていくことが目標です。井波以外の協力隊メンバーとも連携し、それぞれのまちで、ちょっと行って話ができるような、にぎわいの場も創っていけたらいいですね。趣味の映画や本を囲んで、交流を深めたいです。地域おこし協力隊は、地域づくりをサポートすること、そして、地域や世代をこえて協力できる「つながり」づくりをサポートすることが、重要な役割のひとつだと思って、日々活動しています。